オーバーセールによる欠航・元グランドスタッフとして思うこと

オーバーセールによる欠航。

これは初めてのことだったようですね。

グランドスタッフをしていた者として、

この状況がどんな修羅場であったかが頭に浮かび、

いろいろと思うことがあり記事にしている次第ですが、

どこまで書いていいのかわからないのが正直な所。

あくまで私個人の私感としてお読みいただけたらと思います。

兎にも角にも、１番の被害者は当該便に乗られる予定でしたお客様です。

その便に乗らなければならないから、予約、購入をして、空港にいらした。

どうしても乗らなければいけないから振替にも応じられなかった。

でも最終的な結果は欠航。

怒りを通り越し落胆するしかないかもしれません。

私が作業にあたっていたわけではないけれど、身につまされる思いがします。

当該便のお客様が１番の被害者という思いには変わりなく、

それはじゅうぶんにわかった上で、

元グランドスタッフとして思うことを書かせてください。

最初このニュースを目にしたのはyahooニュースの一文で、

え？オーバーセールで欠航？

オーバーセールはわかるけど、なんで欠航？

と思いました。

記事を開いても、その時点で詳細なことは書かれていませんでしたが、

福岡空港の運用時間までに調整が間に合わなかった。

というのを見た時に「確かにこれは厳しい」

と思ったのが正直な感想です。

そしてもうひとつ思ったことが、

この記事のコメントも読んだのですが、

オーバーセールについてここまで浸透したんだなということ。

私が仕事をはじめた頃、

まわりの人たちに、「席以上に予約を取っている」という話をすると、

「嘘でしょ⁉そんなことしていいの⁉」と、

陰でそんな悪いことしてるなんて！のようなリアクションがほとんどでした。

もちろんよく飛行機に乗られる方は知っていらっしゃるでしょうし、

その頃もタイムテーブルに明記はしてありましたが、

そんなことがあるわけないと思われる方が多かったように思います。

昔はまだチェックインをする方式だったので、

席が溢れるかもしれない便のお客様をチェックインする際に、

「この便は席を上回って予約を取っているので、振替えていただく方を募るかもしれない」

という旨をお伝えした時、

「は⁉何それ、どういうこと⁉私は乗れないかもしれないの⁉」と、

その状況を理解していただくにも一苦労ということがよくありました。

今では「名乗り出たけど今回も当たらなくて残念」というような声を聞くので、

グランドスタッフとしてはありがたい（と言っていいのかわからないけど）状況ではあります。

 「昔はまだチェックインする方式だったので」と書きましたが、

これは現役の人に今のハンドリング方法を聞いてはいないので憶測ですが、

これも手続きが遅くなる一因なのかなと。

昔はカウンターでチェックインをしたので、

まずはカウンターで事情を説明し希望者を募ることができます。

自動チェックイン機があったとしても、

当該便だけ使用できないよう止めることもできますから、

早い段階でアプローチができる。

その時点で名乗り出ていただいた方はバゲージを預ける前なので、

バゲージをまだ搭載しないでよけておくこともできます。

（こういう時に何よりポイントとなるのがバゲージです）

福岡空港の運用時間は２２時。定刻で着いても２１：４５の便。

これは衝撃ですね。

たった１５分しか時間の猶予がない。

今回のオーバーセールがなかったとしても、

到着遅れで５分や１０分ディレイするような状況は多々ありますし、

毎日大変だろうなと思います。

話を戻して、

直接ゲートに行くようになった今、

例えば出発１時間前でしたらどれほどの方がゲート前にいらっしゃるでしょうか。

きっとさほどいらっしゃらないでしょう。

今回出発４５分前から募集を開始したとその後の記事で見ましたが、

時間的にはこれでは間に合わないだろうなと。

ですが、チェックインがない今のシステムでは、

この位の時間にしかアプローチができないかもしれないとも思いました。

そもそもチェックイン方式ですと、

実際どのくらい空港にいらっしゃってるか今より早い段階で見通しがつくのです。

チェックイン締め切りまでこれだけ時間があるのにもう何席しかない！と。

その便に乗るために空港にいらしている方がチェックイン数となって目に見えます。

でも今は、出発１５分前に保安検査場を通過しているかしていないかで見るしかないはずなんです。

協力金をもっと釣りあげたらよかったのにという話も、

この件ではよく耳にします。

今回出発４５分前からはじめたようですが、

憶測ですけど、そこで希望された方に今後の話を説明したり、

それはやっぱり協力できないです。となる方もいらっしゃるでしょうし、

短時間で機械的にできるようなことではないですよね。

そうこうしていたら出発３０分前、金額をあげたら協力者があらわれはじめたとする。

今回オーバーしたのは２０名。（数名前後しているかもですが）

先ほど申し上げた、こういう時の何よりの問題がバゲージです。

出発３０分前から希望者の荷物の情報を調べ、

タグの番号を伝えて、搭載している中から探してもらって取り卸して…

としたら人数が人数ですから１５分ディレイでは無理な話です。

この時点で協力者２０名全員が荷物を預けてないとしても、

２０名のチェックインを取り消してバランスを組みなおして…

となるので定刻では厳しいと思います。

もちろん欠航という最悪の事態になってしまい、

対応が遅かったことに尽きるとは思います。

もっと早い段階でかなりの人数をピックアップしておかないと無理だったこの状況。

ただ、昔みたいに早い段階で見通しをたてるのも難しい、

アプローチもできないとなると、

これだけの人数を定刻に飛ばせる段階で確保するのは厳しいと思います。

ある方のブログに（お名前を出していいのか伺っていないので伏せますが）

その日、羽田ー福岡は当該便だけではなくずっと満席が続いていたようなんです。

「その日満席が続いていたのに、次便に振替えていて、自分たちが見ている空席状況とはちがうのかもしれないが…」

とあったのでコメントさせていただいたのですが、

ちがいません。

本当に満席で私たちも困っています。

そして満席となっているにも関わらず次便に振り替えられているのは、

そうするしかないから。

また次の便は玉突きでオーバーする人数が増えていきます。

yahooのコメントにあったこの一文。

「予約サイドはよくこの状態のまま空港にリリースしたものだとコトの深刻さを感じます。」と

今回は欠航にまで大きくなってしまいましたが、

これは日々行われていること。

現場で調整してなんとかやり繰りしているのです。

綿密な計算をした上で、

最も利益があがるようにしなければならないのもわかります。

溢れたお客様を何とか対応するのは地上職の仕事というのもわかります。

でも、実際に予約をして飛行機に乗ろうと空港にいらしたお客様が目の前いらっしゃるのに、

どなたか降りていただかなければならないと説明し、

本当に降りていただく方の対応しなければならないのは過酷です。

対応が遅い、もっと早い段階で規定以上の金額を提示していれば等の問題は別として、

こういう状況になってしまうほどのオーバーセールを少し見直してほしい。

働きながらどれだけ思ったかわかりません。

企業の一員として利益を考えると言ってはいけないことなのかもしれないけど、

今回のような連休の前夜や、年末年始の休みに入るとき、終わるとき、

そのあたりなんて、帰省をするんだし、休みが終われば次の日から仕事だったり、

学校だったり帰らなければならないんですから皆さん乗るんです。

利益を思うと…と言いましたが、こんな日は予約の方だけではなく、

予約のない方が空席待ちでたくさんいらっしゃるんです。

前もって買った割引の航空券ではなく、

当日高い普通運賃を買われても乗りたいお客様がたくさん空席待ちで待っている。

こんな日はオーバーセールなんてしなくてもと思ってしまうのです。

そして今回のような最終便だけでも、お願いだからオーバーセールしないで欲しい。

とも思っていました。

それ位の救いが欲しかった。

それまでの便の玉突きでどんどん溢れる予約。

そして繁忙期にはオーバーセール以外にもトラブルがつきもの。

予約の変更が間違っていた、

手違いで取り消されていた等々…

そのようなことでまた次便次便と玉突きに溢れていきます。

チェックイン締め切りまであと何分…と時計をにらみ、

チェックインされ１席１席減っていく画面を見る恐怖…。

日々いくらかのオーバーセールは当たり前ですし、

それを調整して定時運行をするのがグランドスタッフの仕事です。

それはわかった上で、

空席待ちで溢れるような繁忙期や、そんな日の最終便、

今回のように、お客様に多大なご迷惑と信用を失うことになり兼ねないほどのオーバーセールを少し見直してもらえたら…と思わずにはいられません。

長々と書いてしまいましたが、

航空会社により状況やハンドリング方法は違うので、

今まで書いたことがすべての航空会社、

空港での状況と当てはまるわけではありません。

はじめにも書きましたが私個人の私感です。

お読みいただいありがとうございました。